2019年2月3日日曜日

クラスルール変更提案の補足説明

先日告知されたルール改正案について少し説明を加えます。

1) センターケースに関するに伴うルール変更案について


説明の前に新艇のセンターケースを見たことがないという方もいると思いますので、参考までに写真を添付します。
(http://www.tasarsailing.com/new-boats-winter-20189 から)




既存艇に比べてセンターボードにフィットするような形状になっています。
また既存艇ではセンターケース内の前後にスポンジやスタイロフォームなどの緩衝材が付いていました(クラスルール上は「リストリクター」という名前になっています)。これが新しい艇には付いていません。

私が見聞きした範囲では、新しい艇ではセンターケース内に隙間が無いことから、水の抵抗が少なくなって有利だという考えの人もいるようです。一方で性能に差は無いと考える人もいるようです。実際のところは分かりませんが、新しい艇との形態上の差を無くす選択肢を作ることが、今回のルール変更提案の背景にあるのかと思います。

クラスルール C2.2 (n) と C4.3 の現行版と改定案の対比を見ていきます。
まず C2.2 (n) です
C2.2 オプション(現行版)
(n) ダガーボードを前向垂直に保つように制限する仕掛けは、衝撃的な力が加わった時にダガーボードが後ろに回転するのを妨げないよう十分に弾力的な材料、すなわちスポンジ、ゴム、スタイロフォーム等でできている限り用いることができる。また、この仕掛けはダガーボードの後縁から前に伸びてはならない。この仕掛けに弾力的でない材料を用いてはならない。センターケースのなかでリストリクター(ダガーボードを垂直に保つよう制限する仕掛けのこと)がある部分では、C.4.3で認められているパッドは、潰れたり取り除くことができる。
  ↓
C2.2 オプション(改定案)
(n) ダガーボードケースの詰め物はどのような素材に交換しても良い。この詰め物はセンターラインに対して垂直でハルのボトムに沿って動く直線の境界線を越えて伸びてはならない。
従来の「リストリクター」という名前は無くなって、詰め物(packing)という言い方になっています。
そして改定案ではこの詰め物はどのような素材でも良いとされています。従来は弾力的な材質という条件が付いていましたが、それが無くなった形です。
また従来は、後ろ側のリストリクターはセンターボードより前に伸びてはならないと決まっていましたが、改定案ではこの境界がどこなのか不明でした。
これらについてチーフメジャラーに確認したところ、
・詰め物の材質は文面通り、どんなものでも良いとのことです。例えばFRPのような固い材質でもOKとなります。
・詰め物の位置はボトムより下に伸びていなければOKです。従来のような前後の境界の規定は無くなります。

続いて C4.3 です。
C4.3 現行版
センターケースにパッドを詰めてもよい。パッドはダガーボードを最適な摩擦によってフィットさせる厚さで、センターケースの長さにわたってほぼ均一の厚さでなければならない。
  ↓
 C4.3 改定案
センターケースにパッドを詰めてもよい。パッドの厚みはダガーボードを最適な摩擦によってフィットさせるように変化しても良い。
C4.3はセンターケースのパッドに関するルールです。多くの艇がセンターケースのボトム側の出口のところにカーペットや敷居滑りなどを貼っているかと思いますがそれのことです。
従来はパッドの厚みについて「ほぼ均一の厚さ」という規定がありましたが、改定案では無くなっています。

C2.2 (n) とC4.3 の変更をまとめると、従来の艇のセンターケース周りのパッド類はかなり自由に形状を変更できるようになります。
センターケース内の後ろ側の詰め物もボトム側のパッドも、新しい艇と同じようなセンターボードにフィットする形状のものに交換することも可能です。

もしルール変更が承認された後は、このようなセンターケース周りのパッド類の改造と交換は誰が行っても構いません。ルールの範囲内であればビルダーでなくても、オーナー自らが改造することも認められます。
デザイナーのジュリアン・ベスウェイトが簡単に交換できるキットを開発中という話が以前からありますが、今のところ具体的な情報はありません。

注意していただきたいのは、これらのルール変更で認められるのはパッド類の改造と交換だけということです。ハル自体に手を加えることは認められていません。
またセンターケース内の緩衝材を取り外すことで、衝撃がそのままセンターケースに伝わる可能性があります。安全性が保証されているわけではありませんので、緩衝材を改変する場合は自己責任での対応が必要となります。

センターケース周りの変更に伴うルール改正では、この他に「A8 大会計測」に「同じ建造仕様で作られた」を追加する案になっています。
これまでもテーザーの艇体や装備にはいくつかの仕様変更ありました。同じ仕様の艇同士を計測サンプルの対象とすることが明記されようとしています。
A8 大会計測(改定案)
A8.1 艇のいかなる部分でも、計測で論争する際は次の手順を採用しなければならない。
同じ建造仕様で作られた5艇のサンプルを取り、同一の手法を用いて計測しなければならない。
疑わしい艇の計測数値は他の5艇と同じか、5艇の最大値と最小値の間になければならない。もし問題の艇がこれらの数値から外れていれば、適切な情報とともに世界テーザークラス協会に報告し、最終的な裁定を受けなければならない。もしサンプルの計測数値が異常であると考えられる場合は、全ての適切な情報が世界テーザークラス協会からISAFに諮問されなければならない。

2) コンパスルールの改定案


今回提示された改定案は、2017年のコンパスルールの改正投票で最多得票を集めながらクラスルール改正に必要な票数には及ばなかった案が再提示された形になっています。前回は多肢選択式での投票だったため票が分散したと言えます。その際に最も支持を集めた1案に絞って今回再び投票にかけられています。
ちなみにGPS機能を一部容認したコンパスを採用する案は、前回の投票で日本を含む2つのリージョンまたはディストリクトからしか支持を得られませんでした。
現在の解釈32
ボートスピードを増したり、戦術的なアドバンテージを得られる電子機器をボートに取り付けたり乗員が身に付けてはならない。ただし、規則C.2.2(g)により、(a)時計と(b)コンパスは、レース 中にスピードや位置情報を計算できない限り許される。
 ↓
改定案
C2.2(p) コンパス、電子機器、時計
(a) 艇体に締め具以外の穴を開けないのであれば、デッキやコックピットの任意の場所にコンパスを取り付けてもよい。追加のコンパスを1個、手首に着けてもよい。磁気のデータだけを表示する単独動作の電子式デジタルコンパスは許可される。
(b) 時計は許可される。
(c) 時計と電子コンパスはひとつの機器内に収められていてもよい。
(d) コンパスもしくは時計は、風速、風向、艇速、艇の位置を表示したり、音声で流したり、送受信したり、計算したり、関連づけたり、保存したりできるものであってはならない。

今回の改正案が成立した場合、他のコンパス関連のルールがどうなるのか、またその結果、最大いくつのコンパスが搭載可能になるのか不明だったのでチーフメジャラーに確認しました。

コンパス関連のクラスルールは解釈32の他にいくつかありますが、今回の改正で削除されるのは現行の解釈32のみとなります。C2.2 (g) 、C3.2、C3.3 といったルールは現状のまま残ることになります。
このうち、C2.2 (g) には「最大2つのコンパスを任意の位置に搭載することができる」と書かれています。
そして新ルール案の C2.2(p) には「追加のコンパスを1個、手首に着けてもよい」とあります。
つまりC2.2 (g) の2つに加えて、手首用に1つが追加できるようになったので、テーザーでは最大3つのコンパスを搭載可能になります。

3) ウィスカーポールの製造ライセンス不要化


F1.1とF2.2の改正は、これまでも(特にオーストラリアでは)普通に行われていたことを、ルール的にも追認する意味合いが強いと思います。
現行ルール
F1.1 スパーとリギンは設計者のデザインと仕様に一致しなければならない。これらの仕様に合う部品はビルダーから入手可能で、C.2.2~C.2.4で許されているものを除いて穴をあけたり交換したり変更してはならない。 
F2 製造業者
F2.1 スパーの製造業者はデザイナーからライセンスを与えられなければならない。デザイナーの死後または引退後はテーザークラスデザインの著作権保持者からライセンスを与えられた製造業者でなければならない。
 ↓
改定案
F1.1 スパーとリギンは設計者のデザインと仕様に一致しなければならない。これらの仕様に合う部品はビルダーから入手可能で、以下の場合を除いて穴をあけたり交換したり変更してはならない。
a) C2.2からC2.4で認められた変更。および/または、
b) テーザークラスの仕様および/またはルールに合わせるために艤装品を取り付ける目的で穴を空けること。 
F2 製造業者
F2.1 スパーの製造業者はデザイナーからライセンスを与えられなければならない。デザイナーの死後または引退後はテーザークラスデザインの著作権保持者からライセンスを与えられた製造業者でなければならない。ウィスカーポールの製造業者はライセンスを与えられている必要は無い。
F1.1 の方は「b) テーザークラスの仕様および/またはルールに合わせるために艤装品を取り付ける目的で穴を空けること」という条件が加わりました。
新しいスパーを買って古い方から艤装品を付け替えたり、素管の状態のスパーを自分で艤装することがルール的にも認められます。

F2.1 の改正案では「ウィスカーポールの製造業者はライセンスを与えられている必要は無い」ことが明記されました。
クラスルールで定められた規定に合っていれば、自作等のポールも認められることになります。クラスルールでは他に長さや材質、水に浮く等の規定があります。太さや取付部分には制限がありません。詳しくは F1.6 を参照してください。

その他


今回の解説の対象には加えていませんが、いくつかの「解釈」を多少の変更を伴いながらクラスルール本体に組み込もうとする改正案も提示されています。
これらについては実情に合わせて整理するもので、この改正による影響はほぼ無いと思われます。

また、今回のルール改正の投票では、【センターケース関連のA8と C2.2 (n) と C4.3】と【スパー関連のF1.1と F2.1】がそれぞれひとまとめで賛否を票決するような形になる予定です。
一方、「解釈」をクラスルールに組み込む改正案は、個々のルールごとの票決となる予定です。

JTAメジャラー 軽部竜也

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