2015年9月26日土曜日

ルール強化講習の宿題(質問に対する回答)

オータムレガッタの前日に行われた練習会後のミーティングでは、ルール強化をテーマに講習が行われました。蒲郡ワールドを念頭に、フェアなレースを行うために基本のルール理解を再確認することが目的です。
残念ながら時間に限りがあったため、用意された資料のすべてをこなすまでいたりませんでしたが、ルールを考えるきっかけづくりにはなれたと思います。

さて、講習ではひとつの事例に対して色々と質問が出されましたが、すべて回答するには到りませんでした。これらの「宿題」について、この場で回答させていただきます。
(なおこれらの回答は、「正しい」ルール解釈を保証するものではありません。ルールブックやケースブック等を読んで私が理解できた範囲で答えているものです。より適切な回答をお持ちの方は、ぜひコメント等でご意見ください。)


①フィニッシュ後の回転ペナルティをする場所と、その後の再フィニッシュのコースについて
Q1
フィニッシュ時に例えばフィニッシュマークに接触した場合、その1回転ペナルティをする場所はフィニッシュラインよりもコース側に戻ってからでなくても良いのか?
A1
講習の時の回答と同じですが「戻らなくても良い」です。
他艇から離れてなるべく早く行う必要はありますが回転の場所は決められていません。
規則44.2には「…艇はフィニッシュ・ラインまたはその近くでペナルティを履行する場合、フィニッシュする前にフィニッシュ・ラインのコース・サイドまで完全に帆走しなければならない。」と書かれています。
ペナルティ回転をした後には一度コースサイドに戻り、再びフィニッシュする必要はありますが、回転する場所についての規定はありません。

Q2
フィニッシュ後にペナルティ回転を行いコースサイドに戻る時に、その戻る航跡はフィニッシュラインの間を通過しなければならないのか?フィニッシュラインの外側を通って戻っても良いのか?
A2
これは「フィニッシュラインの外側を通って戻っても良い」ようです。
規則28にはコースを走る艇の航跡を示す糸をぴんと張った時に、それぞれのマークを定められた側で通過することを定めています。
この糸は各マークの正しい側を通っていれば、マークを結ぶようになっても良いようです。つまり一度フィニッシュラインを通り、コースの外側でペナルティを履行し、フィニッシュラインの外側を回ってもう一度フィニッシュラインを通過すると、糸はフィニッシュマークを結ぶようになります。これはOKということです。一度通過したフィニッシュラインを逆方向に通過しなおす必要はありません(そうしてもOKですが)。
JSAFルール講習会の時にそのように聞きました。

また同じようなことはケースブックにも書いてありました。
ケース106では糸がフィニッシュライン、またはゲートのマークの間を通過していれば、たとえ定められていない側を通過しても構わない、とされています。
以下のケースでは艇は規則28.2に従っています。
case 106


ちなみに以下のような場合ではどうなるでしょうか?スタートラインでのケースです。
回答はケースブックでご確認ください(ケース90)。
case 90

(上記のケース画像はISAFのWebページ上に掲載されている、ケースブックから資料の画像を拝借しました。
http://www.sailing.org/documents/caseandcall/case-book.php
http://www.sailing.org/tools/documents/20132016ISAFCaseBookUpdatedJan2015-[18282].pdf )

②マーク回航の際のマークルームについて
Q3 マークルームを与える必要があるのはいつまでか?
規則18が適用される場合に「マークルームの資格があるのはいつまでか?マークとオーバーラップしている間という理解で良いか?」という質問がありました。
A3
RRSにそのような規定は無い、というのが私の理解です。RRSとケースブックを見返してみましたが、やはり質問に対する明確な回答となる条文は見つけられませんでした。
マークルームの定義に照らし合わせて考えてみると、「コースの帆走に必要なだけマークを回航する」ために必要なルームとしか言えません。
それがいつどの瞬間なのかは、はっきり分かりません。

ちなみにマークルームの「量」については、その大小の規定はないとケースブックに書かれています。
風や潮、また艇の特性やその時のスピードなどによって必要なマークルームの量は変わるとされています。荒れた海面や、大型でスピードのあるクラスのレースではマークを回航するのに必要なルームは大きくなりますし、逆に穏やかな海面では必要なルームは小さくなります。
(ケース21)

(追記)
Q3のマークルームに関して、ISAF Q and A サービスに同じような質問を見つけました。
日本語訳がJSAFルール委員会のページに掲載されています(下のURLはPDFにリンクしています)。
http://www.jsaf.or.jp/rule/isafQA/Q&Abooklet140804.pdf

B007を読んでみてください。
B005も理解の助けになるかもしれません。


以上です。

ルール普及担当理事
軽部 竜也

2015年9月15日火曜日

カーボンマストのその後(デザイナーレポートから)

2015年のWTC会議で発表されたデザイナーレポートがWTCのWebページに掲載されています。

それによるとテーザーのカーボンマストの開発は中断されたようです。
以下のように記されています。
I need to stress, Mum and I, thought long and hard about the new carbon rig for the Tasar and though there was a small majority in favour, we decided not to proceed.   The reason from my point of view are:-
a)      Yep we would lose some sailors but we would gain others so that was a zero net gain and that's not a positive.
b)      Cost to do it would take probably 5-7 years to recover, and that's about normal, so that was a positive.
c)      It would lead to a reduction in the price of sails, plus a new look, modernisation, and that's a big positive.
d)      But the biggy was there was no champion to carry this through.   I can't do it.  Alistair, who is the logical other is now pretty heavily committed elsewhere, and there is presently no other person standing up and willing to take it on and make it happen.
That may sound pessimistic, I in fact think otherwise!     We are in for change, Parky going, Alistair and his Victorian cohorts being less vocal, someone new will bubble up, maybe someone from Seattle, or a POM with new fresh ideas and new passion.
To burden those people with a 2-3 year development project (carbon mast) was unfair.
決定的な理由として、開発を推進するスタッフが確保できないことが挙げられています。


軽部竜也


2015年9月11日金曜日

クラスルール変更について(経緯説明と補足)

2014年11月20日付でクラスルールが変更になりました。
今回の変更点はC2.1(c)、C2.1(f)、C2.2(o)の3点です。
変更点の概要はJTAホームページに掲載していますので、こちらの記事を参照してください。

それぞれのクラスルールが提議されて時点から時間がたっていますので、分かる範囲で経緯を説明するとともに一部、情報の補足をしておきます。

C2.1(c)は2011年にイギリス・トーベイで行われたワールドの時に承認されたルールです。
その時のメジャラー会議で日本から提案し、WTC会議で承認されました。
当時のJTA通信に日本からの提案内容が以下のように記録されています。 
d. クラスルールの改定提案以下の提案をしたC2.1(c)「G1.2により計測したジブ」とあるが、G1.2は存在しない。G1.1の単純ミスなので、修正を求む。計測でOKの出た2枚のジブをレガッタ中に自由に交換できることを明文化してほしいと提案した。いずれも承認され、WTC会議に提案することとなった。
この提案が承認される前から、レガッタ中のジブセールの交換は、チーフメジャラーの見解により容認されていました。それをクラスルールとして明文化しようというのがJTAの提案の目的でした。
結果、JTAからの提案通りジブセールの交換は明記されました。しかし一方で「G1.2」という条項は存在しないという指摘は、なぜか無視されたようです。JTAからは改正の文案も提案していましたが、文案を精査された結果、「G1.2」の記述が残ってしまったようです。この会議の議事録に「The wording needed to be refined. This would be circulated to the WTC before being sent to ISAF for inclusion in the class rules.」と書かれています(WTCのWebサイトに2011年WTC会議の議事録があります:)


C2.1(f)とC2.2(o)は、2009年和歌山ワールドのWTC会議で提議されたルールです。
その時のエグゼグティブ・セクレタリのレポートに以下のように記録されています。
Class rules 
There was a minor perturbation when Georg Tallberg, the chair of the ISAF Class Rules Sub-committee, advised us that our class rules do not allow owners of older boats to incorporate changes that are introduced on new boats, such as RCB shroud slides. We were also told that measurements are required to ensure RCB shroud slides are retrofitted correctly. Eventually, we were allowed to go our willful, wrong-headed way, but two rule changes are being proposed to ensure we are fully ISAF compliant in future.
どうやらクラスルールについて、ISAFから提言があったようです。テーザーのクラスルールは、新艇には艤装品の変更があっても、既存艇にも同じように適用されることを認めていないとみなされたようです。それから当時新しい艤装品だったRCBシュラウドスライダーを艇に導入する時に、正しく装備されたことを証明できるように、計測方法を明確にすることも求められました。
そうしたことが発端となってWTC会議で提議され、各リージョンで投票にかけられることが決まりました。
日本では2010年の総会で投票を行いました。C2.2(o)については否決したようですが、他のリージョンの投票を集計した結果が賛成多数で承認となったようです。(2010年JTA総会の議事録はニュースレター92号に掲載されています)


ところでC2.2(o)にはRCBシステムを構成する部品と計測方法が書かれていますが、これらはこれまで解釈37と38に記載されていたのと同じ内容です。
C2.2(o)がクラスルールの本文として公開されたので、解釈37と38は「クラス規則C2.2(o)に組み込まれた」とでもしておくべきですが、なぜか解釈38は元のまま残っています。解釈37も意味のない一文だけが残されています。おそらく編集上のミスだろうと思います。そのうち修正されると思いますがご注意ください。
それからC2.2(o)にはRCBトラックの設置位置までの距離の計測方法が書かれていて、「…写真のようにデッキレベルで計測 した長さは…」とあります。しかし肝心の写真が抜けています。
以前の解釈37のところで掲載していた写真がそれだと思われますので、記録のためにここに掲載しておきます。

以上

JTAメジャラー 軽部竜也

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