2010年9月4日土曜日

クラスルールC6に関するWTCA情報の日本語訳(3)

下記は、「A reply from Frank Bethwaite to Alistair Murray's letter on the crew weight rule」の日本語訳です。(国際事務局)
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クルーウェイトルールに関するAlistair Murrayの書簡に対するFrank Bethwaiteの返答

To   Alistair Murray,

Copy Chris Parkinson, WTC Exec Sec    
     Julian Bethwaite
From  Frank Bethwaite.

クルーウェイトルールに関して

アリステア様

ウェイトルールの廃止に賛成される貴殿の思慮に富んだ議論に感謝いたします。

現存のルールが完全なものではありませんし、より良いルールがあれば変更されることも可能ですし、そうされるべきであると私も考えます。

同じように、公開の議論は有用であると私も思います。以下に述べるコメントについては自由にお使いください。

根本的に、貴殿の議論はひとつの観察結果に基づいており、そこから2つの結論を導き出しておられます。

1.貴殿の観察結果は、他の条件が同一であれば、ディンギーレースでの通常の
  風域と海面状態においては、136kg(300lbs)から140kg(309lbs)までのク
  ルーウェイトを持つチームが、それ以外のチームよりも速く帆走する傾向が
  あるというものです。
  (訳注:lbsは重量単位ポンドを指す)

その結果として、貴殿は次のことを主張されています。

2.クルーウェイトルールがもし撤廃されたとしても、どのチームにとってもレース
  結果について弊害はないでしょうし、女性陣がテーザーのレースや社交活動
  を楽しむのに悪影響を与えないでしょう。

さらに、

3.より多くの女性がテーザーに乗るようになるでしょう。なぜなら、体重を
  明かさなくていいからです。

私は、貴殿のご意見に同意いたしません。思うに、4つある想定のうち貴殿が観察した2つの想定に対しては、貴殿の観察結果と結論は正しいと認めます。しかし、4つ目の想定を観察する機会を貴殿は持たなかったのです。まさしくこの4つ目の想定が、1970年から1972年にかけてNS14クラスにおいて調和を乱したのです。

以下、説明いたします。

1969年のことですが、私の上の息子であるMark Bethwaite が、Medium Dribblyと名づけた、細いバウと三角形に近いハルを設計しました。これにそのころ私が開発した制御可能なウィングマストを取り付けたところ、それ以前のどの船よりも格段と速いスピードを持つ、本当に「革新的な」船となりました。Markはこの船の1969年のオーストラリア選手権で優勝しました。1970年のNSW選手権では100艇が参加しましたが、Julianと私が優勝しました。このときは、(2位をひとつカットしましたが)すべて1位で勝ったのです。

この船のスピードが速いので、次のようなことが起こりました。軽量のチームがブロードリーチを走るときには、風向が前方に変わるように素早くプレーニングするので、より早く、より良いスピードでプレーニングできてしまい、ラルでもフレーニングを維持することができたのです。この効果のおかげで、チームの重量によって帆走性能に大きな差ができてしまったのです。すなわち、一方は、以前からクラスを支えていた300lbsの一般的な男女の成人ペアです。他方は、新たにこのクラスに多量に参入してきたチームでした。この方々は、クラスルールである250lbsという最低クルーウェイトを満たすために青少年をクルーとして選び、この新たな領域のスピードを得たのです。

意外だったことは、すべての軽量クルーが速く走れたわけではなかったことです。

1971年になると、そのために元々クラスが発展してきた成人女性達が、多量にクラスから離れ始めたのです。なぜなら、成人女性達は、自分たちが「重すぎる」と思い始めたからです。

大きな問題となったことは明白でした。なにが起こったかを正確に知るために、私は1971年にAlburyのHume Weirで開催されたオーストラリア選手権には選手としては参加しませんでした。その代わりに、すべてのレースで、すべての参加艇の、すべてのマークでの計時を実施したのです。そして、風速を測定しその絶えざる変化を記録し、すべての測定結果を解析したのです。

その結果次のことが分かりました。だれもプレーニングできないような7knots以下の風速のとき、それぞれのレースで最初にフィニッシュした5艇の軽量艇(250lbsから260lbs)は、同様な5艇の重量艇(300lbsから310lbs)よりも約1分速く帆走していました。ところが風速が8knotsを超えると、軽量艇はより早くより良いスピードでプレーニングし始め、重量艇よりも平均して約9分速く帆走することができていたのです。

・1971年の解析により、この問題にかかわる性能の特徴が分かりました。
・2000年に実施した帆走シミュレーターの結果の解析から、この問題にかかわる
 帆走技術の特徴が分かりました。

こうして今になって分かったことは、2つではなく、4つの想定があったことです。

1.重量チーム、かつ、普通の帆走技術
現在、この範疇がどのフリートでも95%から97%を占めるでしょう。セールを完璧に設定することができるので目標の速度に達することもたまにはあります。ティラーとシートを連携して動かせません。急なバランスをとるために体を動かすとき以外に、ラダーをあらゆる目的で動かします。突風ではラフしてしまいます。激しい突風ではさらにラフしてしまいます。突風のときにはシートを出さないので、空力抵抗の増加を補って推進力を増やすことをしません。その結果艇速は遅くなってしまいます。シートやトラベラーを固定して動かさないでいるので、突風でスピードをロスしたり確認している後になってようやく目標の速度に達します。

軽量チームがこのように帆走すると、突風では重量チームよりも遅くなります。これが、なぜ貴殿が重量チームが速く走り勝ちだということを見て取ったか、についての理由です。

2.重量チーム、かつ、速く走れる帆走技術
現在、この範疇に当てはまるのは、Rob and Nicole Douglass, Jonathan and Libby McKee, Craig McPhee, Shane Guanariaであり、フリートのなかでは3~4%を占め、常に少ないスコアでフィニッシュします。

セールを完全にセットし、ほとんど体もラダーも動かすことなく、ヒールとスピードはシートとティラーの連携した動きで制御します。どんな突風でもセールをわずかに出すことによって推進力を増やし、目標速度を維持します。目標速度にまで達していないと感じるときは常にセールを出します。連係した動きをしない普通のセーラーに比べて、常に目標速度かそれに近い速度で走ります。これが彼らが勝つ理由です。

3.軽量チーム、かつ、普通の帆走技術
帆走技術は、重量チームの普通技術の範疇と同様です。約8knotsまでは競合できます。それ以上の風域では、風上航ではあまりにも遅く、風速を確認したあと目標速度に戻るのが遅いので、苦労し、後退してしまいます。

4.軽量チーム、かつ、速く走れる帆走技術
40年も前になりますが1970年と1972年に常に重量チームよりも2レグ先駆けてフィニッシュするチームがおり、この範疇に属することとなります。風上航では、突風に際しセールを少しフラットにして空力抵抗を減らし、推進力を得るためシートを出して、重量チームに比べてなんら苦しむところはありませんでした。風下航では、より早くより良いスピードでプレーニングするので一層スピードを増し、突風に向かって突き進んでそのスピードを用いてさらに一層突風域に進んでいったのです。

この範疇に属するチームは現在存在しないので、貴殿は観察することができなかったのです。

上記のチームの存在がNS14クラスに与える心理的な影響は甚大なものでした。「女性はヨットには乗らないものなのだ」という風潮の時代にあって、クラスは、「一人の男性と一人の女性の力で発揮できるより楽しく最高の性能」をもたらすために生まれてきていたものでした。

10年ものあいだ、男性たちは船の性能を少しずつ向上することによって、より一層の楽しみをもたらしてきました。

女性たちは、海上でも陸上でも大人らしく支援し、交流することにより、やはり一層の楽しみを付け加えてきました。

しかしながら数ヶ月のうちに、女性たちは、男性たちに無作法にも次のように告げられていたのです。「貴方は体重が重過ぎるのです。街をうろついているような子供とでも一緒にレースに出れば、勝つチャンスがあるのです。貴方との親交よりもずっと、勝つチャンスを大切にしたいのです。」

女性たちは大挙してクラスを去り始めた。

この難題に直面し、かつクラスの長老たちに支えられて、私は、軽量チームの乗るNS14よりも速く走る船を、新たに技術を駆使して作り上げました。そして、管理上の視点から、世界で最初の平等化ルールを書き上げたのです。このルールは、起こった悲劇が繰り返されることのないよう新しい船のクラスを保護するものでした。こうして、私たちは、まもなくテーザーと呼ばれるものを生み出したのです。このテーザーというものは、たぐいまれな帆走性能と、大人の親交する場としての両方を兼ね備えた唯一のクラスとして、40年ものあいだ、生き延び、繁栄してきたのです。

私は、このたぐいまれな帆走性能に貢献してきたことを誇りに思うものであります。

大人の親交の場は、このルールのおかげで取り戻され、その後長く保たれてきたのです。

アリステア様、私の考えをぜひ考慮してください。そして貴殿が見てきたものに付け加えてください。そして、テーザークラスが万一クルーウェイトルールを撤廃したとしたら、将来にわたってどんなことが起こると考えられるか、再考してくださるようお願いいたします。

よろしくお願いいたします。

Frank Bethwaite
設計者

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