ルール普及担当理事の軽部です。
JTAではテーザーセーリングに関連する様々な情報発信を行っていきますが、RRS関連の情報については、このJTA通信に集約してルール普及担当理事が発信していくことになりました。
以下の内容はJTA公式Webサイト上に「Tasar Sailing Tips Vol.1」の一部として掲載されたものです。この度、場所をJTA通信に変えることになりました。掲載場所は引っ越ししましたが、内容に変更はありません。
今後もルール(RRS)に関する有益な情報があったら、この場を通してお知らせしていきます。
【Tasar Sailing Tips Vol.1 ルール編】
ここではレース中に出くわすシーンや判断に迷うケースを取り上げ、規則の適用などを考察していきます。執筆している我々の理解不足などから結論が誤っていることがないとは言えません。一筋縄ではいかず、直ちに正しい解釈を得ることが難しいケースもあると思います。そのようなときは、皆さんの知識を持ち寄って、正解を導きだすような形で進めていきます。これを機会にルールの理解をお互い深めていきましょう。
○ペナルティーの履行について
最初にペナルティーについて取り上げます。レース中に起こる艇と艇との間のインシデントにおいて規則に違反した場合、マークタッチの違反をおかした場合等、ペナルティーを履行することで失格を免れます。フェアなレースをする上で、ペナルティーの履行について理解することは重要です。規則44(ルールブック26ページ)を確認しましょう。
(1) 「マークとの接触」のポイント
・マークとの接触は規則31に規定されています。規則31(ルールブック21ページ)確認しましょう。
・マークとの接触が違反となるのは、レース中です(準備信号からフィニッシュして、フィニッシュラインから離れるまで)。
・接触が違反となるマークは、①スタート前のスタート・マーク、②帆走中のコースのレグの起点、境界または末端となるマーク、③フィニッシュした後のフィニッシュ・マークです。
・①について、本部船やアウター・マークとなっているレース委員会艇を含みます。
・②について、スタートラインの上側に設置されている第3マーク(下マーク)との接触は、スタートから第1マークに向かう第1レグでは違反とはなりません。
・③について、フィニッシュした後、フィニッシュラインから離れる前にフィニッシュ・マークと接触した場合には、マークとの接触になります。1回転ペナルティーを履行した後、コースサイドに戻り、再度フィニッシュラインを切る必要があります。
Q1:スタート3分前にアウターとなっているレース委員会艇の側舷に接触した。これはマークとの接触にあたるか?
・スタート3分前はレース中です。レース中のマークとの接触であり、速やかに1回転ペナルティーを履行する必要があります。
Q2:スタート1分前に本部船をガードするために下側に流されているブイに接触した。これはマークとの接触にあたるか?
・スタート1分前はレース中です。本部船をガードするためのブイ、フェンス等はマークの一部です。レース中であり、速やかに1回転ペナルティーを履行する必要があります。なお、本部船に掲揚されているフラッグもマークの一部となります。
Q3:アウターマークのぎりぎりでスタートし、スタート後にセンターボードがアウターのアンカーラインにひっかかった。アウターのブイ本体との接触はなかった。これはマークとの接触にあたるか。
・アンカーラインやマークに偶然付着した物体は、マークの一部ではありませんので、マークとの接触にはあたりません。したがって、ペナルティーを履行する必要はありません。
図は「RRS2013-2016改正の変更点(JSAFルール委員会資料)」より
Q4:フィニッシュラインを切り、その瞬間に緩めたブームがフィニッシュマークに接触した。これはマークとの接触にあたるか?
・バウがフィニッシュラインを切り、艇がフィニッシュラインから離れる前にブームがフィニッシュマークに接触しており、マークとの接触にあたります。したがって、できるだけ早く、他艇から十分離れて、1回転ペナルティーを履行し、コースサイドに戻り(戻るときに必ずフィニッシュラインを通過する必要はありません)、再度フィニッシュラインを切る必要があります。
(2) 1回転ペナルティーのポイント
・1回転ペナルティーは規則44.2に規定されています。規則44.2(ルールブック26ページ)を確認しましょう。
・規則に書かれているとおり、できるだけ早く、他艇から十分離れた後に行う必要があります。
・1回のタックと1回のジャイブを含む回転ですが、マークから離れた後のコースの変針やマーク廻航の動作とあわせて行うことが可能です。これらの場合に360°の回転とはならない場合があります。
・上記の詳しいことはケースブックのCase108に記されており、大変参考になります。是非確認してください。
・ペナルティーを履行している場合には、他艇をさけなければなりません(規則22.2)。一方で、プロパーコースを帆走中の場合を除き、艇はペナルティーを履行している艇を妨害してはなりません(規則24.2)。
Q1:このケースにおいて、艇はフィニッシュしたか。
・位置1で艇はフィニッシュしています。定義:フィニッシュを参照してください(ルールブック7ページ)。しかし、フィニッシュラインから離れる前に(すなわちレース中に)マークタッチしました。これを解消するために回転をしようとしていますが、回転不足のまま(1回のタックと1回のジャイブを含む回転になっていない)、フィニッシュラインを切っています。したがって、マークタッチ(規則31違反)のペナルティーを履行したことにはならず、フィニッシュはしたが、規則31違反となります。よって、レース委員会や目撃した艇から抗議されれば、失格となるでしょう。
図は「RRS2013-2016改正の変更点(JSAFルール委員会資料)」より
Q2:この艇はどうすればよかったか。
・再びフィニッシュラインを横切る前に、1回転を完了しておく必要があります。具体的には、フィニッシュラインを横切る前にタックし、スターボードタックでフィッシュラインを横切ります。こうすることで、位置1でのフィニッシュは消え、ペナルティーを履行した後にフィニッシュラインを横切った時がこの艇のフィニッシュとなります。
Q3:フィニッシュ時にマークタッチした場合、1回転ペナルティーは一旦コースサイドに戻って行う必要があるか。
・1回転ペナルティーを行う場所は、コースサイドである必要はありません。求められるのは、「できるだけ早く、他艇から十分離れた後に行う」ことです。したがって、コースサイドと反対側で1回転ペナルティーを行い、コースサイドに戻り、再度フィニッシュラインを横切ることでフィニッシュすることができます。ただし、「できるだけ早く」という条件から外れることがないよう、速やかに行うことを心がける必要があります。
Q4:Q3のケースでコースサイドと反対側で1回転ペナルティーを行い、コースサイドに戻るときに、糸の原理を守るため、フィニッシュラインを通過する必要はあるか。
・コースサイドに戻る際にはフィニッシュラインを通過する必要はありません。フィニッシュボートのスターボ側、フィニッシュアウターのポート側を通過して戻ることで問題はありません。
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