2019年9月9日月曜日

メジャラー会議@Hayling Island の報告

JTAメジャラーの軽部です。
イギリス、Hayling Island Sailing Club で行われたメジャラーミーティングの概要をお知らせします。
メジャラーミーティングには上松さんに出席してもらいました。

1)カーボンマストについて
カーボンマストへの移行が議題にあがりました。
端緒としては、アルミマストの供給の問題(ワールド全体で在庫が無いと思われた。後から、数年分は残っていることが確認された。)があり、カーボンマストへの変更提案がデザイナー側からあったようです。コスト的にもカーボンマストの方が安い可能性が高いとのことです。いずれにせよ、前回のセンターケースの経緯(新しい形状の艇が販売された後に議論になった)も踏まえ、デザイナーはクラスとして進めたいという意思があって初めて検討を進めるとの考えのようです。

その上で、メジャラーの意見としては以下の点が挙げられました。
・パフォーマンス:可能な限り同等、少なくともアルミより劣らないこと
・セール:同じセールが使用できること
・2セクションマストであること
・場合によってはオートローテーションの機構を取り入れる

今後の進め方は以下のようになる予定です。
・メジャラーでカーボンマストの利点と欠点を大まかにまとめる。
・各国で、その利点欠点を考慮した上で変更したいか意見をまとめる
・全体の意見を集約してクラスとしての意見をまとめる。
・カーボン賛成となった場合には、デザイナーに上記条件でモデルマストを作成してもらい、各国に配布してテストする
・テスト結果を基に議論を進める

以下は私からの補足です。
カーボンマストは過去にも導入を検討したものの開発が断念されたことがあります。その時はクラスとして積極的な姿勢でなかったのが主な要因でした。
今あらためて考えると、軽くてコストも妥当でアルミマストと著しく性能差が無いカーボンマストなら導入を進めても良いのではと個人的には思っています。まったく同じパフォーマンスというのは現実的に不可能だと思いますが、ほぼ同等から少しだけ良いぐらいのパフォーマンスというのは目指すところとして妥当だと感じます。
通常は壊れた時ぐらいしか買い替えることがないものなので、カーボンが導入されたとしてもクラス全体に普及するまでに時間がかかるかもしれません。よほど性能が良いものであれば一気に買い替えが進むかもしれませんが、それはそれで既存のアルミマストとの性能差が大きいという公平性の問題があります。
またカーボンに移行しないとしても、今後もアルミマストが安定的に供給できるかという点も気になります。

2)クルーウェイト
クルーウェイトルールを撤廃することが話題になりました。オーストラリアのビクトリアでは、C6で定められたバラスト搭載重量を最大12kgから最大4kgにクラスルールを変更してレガッタを実施しているようです。
ただC6撤廃に対しては、オーストラリアの一部ではクラスの存続を危惧する考えが依然として強いようです。彼らは重量級チームが離れていくことを懸念しています。一方でチーフメジャラーからテーザーの最適体重は過去130キロだったが、現在では140から145という意見が多いということを述べられていました。

また、日本からは体重計測のタイミングの問題*について意見を出し、各国のメジャラーもそのリスクについては認識・納得してくれました。ただ明確な結論は出ないまま終了しました。
(*クラスルールでは体重計測をするタイミングは限定されておらず、レース後にハーバーバックしてから体重計測することもあります。登録時の体重計測では問題なくても、レース後に予想以上に減量していて、失格となってしまうこともあります。130kgを大幅に上回っているチームを除けば、このリスクはどのチームにもあります。これを変更するためには、体重計測は登録時のみに限る、などの規定をルールに追加することが必要だと考えています。)

3)ロアマスト長(デッキ-ハウンズ間の長さ)の計測方法
サイドテンションをどの程度入れるかによって長さが異なるため、計測方法を厳密に定義する必要があるということが話されました。
今回のイギリスワールドでは、艇を横倒しにしないで2階のテラスから計測したようです。この状態ではサイドテンションをかけずに計測できますが、横倒しにする場合、テンションの入れ具合によってはマストが曲がって計測値が短くなり得ます。これを防ぐために計測方法を定義する必要があるという意見が出されました。

ロアマスト長の計測では通常、サイドステイに軽くテンションがかかるぐらいで計測します。
艇を横倒しにしないで(船台に乗ったままの状態で)計測する方法は手間も削減できて良いのですが、できる施設が限られてしまいます。江の島のようにちょうど良い階段などがあると良いのですが。標準化という点では、どこでも同じ手法でできることが必須です。

4)ハルのみを購入してフィッティングした場合の計測
オーストラリアの新艇の半分はベアハルで購入して自分でフィッティングされています。装備品の位置などの仕様はクラスルールに規定されておらず、メジャラーが関与する余地がありません(計測で可否を判定できない)。この点について有利不利が生じないような対策が必要との見解が示されました。

5)レトロフィットのセンターケースの取り付け方法
クラスルールの改定により、センターケース内の詰め物(packing)の改造が可能になりました。新艇(2017年前後から供給されている艇)のセンターケースと同じ形状にすることを許可するルールになっています。今回のワールドではイギリスやオーストラリアから、実際に改造した艇が参加していたようです。
クラスルールでは詰め物は船底の水平線より出てはいけないことになっていますが、改造を施した艇の一部でわずかに超えている事例が見られたようです。ただしそのはみ出した範囲と形状は新艇と同様で、これは新艇のスペックを模倣したものだと考えられます。クラスルールの条文からすると違反と考えられますが、新艇と同じスペックへの改造を認めようとするのがクラスルール改定の主旨だったこともあって、当該艇の参加は認められたようです。今後クラスルールを正式に変更していくことを検討していくことになりました。

図で表してみました。ただ私も実物を見たわけではないので、正確に反映しているとは言い切れません。

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